担当科目(平成17年度)
東京大学
- 言語情報科学演習 I, II(大学院総合文化研究科・言語情報科学専攻):音韻論・形態論に関する演習を行い、同時に論文作成の指導を行う。II では1年次の演習を踏まえ、音韻論・形態論に関する個別のテーマを取り上げて演習を行い、同時に修士論文作成の指導を行う。
- 言語情報科学特別演習(大学院総合文化研究科・言語情報科学専攻):音韻論・形態論に関する演習を行い、同時に博士論文作成の指導を行う。
- 言語情報解析演習 III(大学院総合文化研究科・言語情報科学専攻):この授業の目標は,Ito & Mester (2003), Japanese Morphophonemics: Markedness and Word Structure, MIT Press を読み解きつつ,「連濁」という形態音素規則が最適性理論という枠組みにおいて,いかに包括的かつ洞察深い説明を与え得るかについて,建設的/批判的検討を加えることである。授業の進め方は分担・発表形式を採用し,参加者にセクションごとのポイントを口述してもらいながら,質疑応答する形で進めていく。正味200数十ページからなるもので,1回の授業につき15〜20ページの割り合いで進める予定である。あらかじめ丹念に読み,深く考えてくることが前提であり,言語科学基礎論 II または一般言語理論演習 II など,音韻論に関する科目を履修済みであることが望ましい。評価は出席数と口述とレポートなどによって行う。
なお,最適性理論は言語の「情報解析」に関連する理論ではあるが,この科目では「実験実習」は行わないので,そのつもりで履修すること。
- 言語科学基礎論 II(大学院総合文化研究科・言語情報科学専攻):この授業の目標は,言語学の一部門である音韻論・音韻理論の基本的な考え方と道具立てを理解することである。ただし,その目標を最適に実現するため,音韻論の様々な現象を網羅的に扱うのではなく,アクセントとリズムなどの韻律現象に焦点を置く(が,関連するセグメンタルな現象も随時紹介する)。授業では講義形式を採用し,韻律現象の生理・物理・心理などのメカニズムを理解した上で,それらが文法レベル(音韻レベル)でどのような現象として観察され,どのように一般化されるのかといった記述音韻論を導入する。その後に,一般化されたパターンを説明する音韻理論の流れとして,60年代から70年代までの「規則に基づく音韻論」,70年代から80年代までの「原理とパラメータに基づく音韻論」,そして90年代から現在までの「制約に基づく音韻論」を概観することで,生成音韻論の歴史を追体験する。テキストは,田中伸一著『アクセント・リズム』(研究社)を用いる。
評価は出席数・授業中の適切な発言・レポートなどによって行うので,それ相当の積極的な姿勢が望まれる。その他,詳細については初日に行うガイダンスにて連絡する。なお,この授業は4つの言語学入門講義の1つであり,言語学分野で修士論文を書く場合には必修科目(1年次に履修)となっているが,言語学以外を専門とする学生で音韻論の基礎を身につけておきたいという学生の履修も歓迎する。ただし,一般言語理論演習 IIとの重複履修はできないので,内部進学生は注意すること。
- 一般言語理論演習 II(教養学部・言語情報科学分科):この授業の目標は,言語学の一部門である音韻論・音韻理論の基本的な考え方と道具立てを理解することである。ただし,その目標を最適に実現するため,音韻論の様々な現象を網羅的に扱うのではなく,アクセントとリズムなどの韻律現象に焦点を置く(が,関連するセグメンタルな現象も随時紹介する)。授業では講義形式を採用し,韻律現象の生理・物理・心理などのメカニズムを理解した上で,それらが文法レベル(音韻レベル)でどのような現象として観察され,どのように一般化されるのかといった記述音韻論を導入する。その後に,一般化されたパターンを説明する音韻理論の流れとして,60年代から70年代までの「規則に基づく音韻論」,70年代から80年代までの「原理とパラメータに基づく音韻論」,そして90年代から現在までの「制約に基づく音韻論」を概観することで,生成音韻論の歴史を追体験する。テキストは,田中伸一著『アクセント・リズム』(研究社)を用いる。
評価は出席数・授業中の適切な発言・レポートなどによって行うので,それ相当の積極的な姿勢が望まれる。その他,詳細については初日に行うガイダンスにて連絡する。なお,この授業は基本的に修士課程学生のための入門講義(大学院の言語情報科学専攻の「言語科学基礎論 II」との合併科目)である。学部生の履修希望者は,あらかじめ「言語情報分析論」またはそれに相当する入門授業を履修していなければならない。
- 英語 (43)(教養学部・言語情報科学分科):この授業の目標は,日本語の有声性とそれに関連する語彙層の問題を巡って展開された論争を吟味することを通して,日本語文法に対する理解を深め,現代音韻理論の方法論(主張を裏付けるための論法や議論の仕方)を身に付けることにある。具体的には,Ito, Mester, & Padgett (1995) の主張と,それに対する Rice (1997) の批判,そして Ito, Mester, & Padgett (2001) の反論を読み解くことで,テーマそのものの理解はもとより,1)それぞれの主張の論点はどのようなものであるか,2)主張を指示する論拠がどのように妥当なものであるか,3)どちらに軍配が上がるか,などを吟味する。
授業の進め方は分担・発表形式を採用し,参加者にセクションごとのポイントを口述してもらいながら,質疑応答する形で進めていく。評価は出席数と口述とレポートなどによって行う。
- 言語理論史(教養学部・言語情報科学分科):このクラスでは,言語理論史の中でも音韻理論史を取り上げ,音の分布や変化に関する法則性を扱う分野である音韻論において,様々な現象を説明するためにどのような理論が開発され,どのような変遷を経てきたかというテーマを概観する。取り上げる理論の概要や変遷を理解することが目標だが,同時に1)なぜ(何を目指して)そのような理論が出てきたのか,2)データを適格に説明できるのか,3)論理的な矛盾や欠陥はないか,なぜ新しい理論に取って代わられたのか,などの観点から批判的検討を加えることも重要な目標としたい。
授業の進め方は講義形式を基本とする。ただ,理論をテーマとした講義は一方通行になりがちなので,こちらもなるべく具体的になるよう工夫するつもりだが,受講者も積極的な発言と参加が求められる。また,それが評価の大きな位置を占めるので,そのつもりで受講されたい。
- 21世紀COEテーマ講義「心とことば:言語の視座」(リレー講義):音のパターンと法則性:音の普遍性と多様性を捉える音韻論(5月30日)(教養学部・前期課程):人間言語で用いられる音の分布や配列は,ランダムになされているわけではなく,ある種の法則に従っている。それは誰しも当然のように獲得し,それに従って言語を用いているにもかかわらず,自然法則の場合と同様に普段意識されることは全くない。しかし,法則性があるからこそ,母語話者にとってその獲得に大差は見られないのである。ただし,その法則性には全ての言語に共通する部分(普遍性)と,言語ごとに異なる部分(多様性)があり,その異なる部分の決め方が言語の個性を形成している。
本講義ではこうした音の法則を扱う分野 --- 音韻論の世界へと誘い,日本語や英語などの身近な言語現象を観察しながらいくつかの法則に触れ,そこから言語の普遍性や多様性がどのように導かれるかを考察する。
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