担当科目(平成18年度)
1. 東京大学
- 言語情報科学演習 I, II(大学院総合文化研究科・言語情報科学専攻):音韻論・形態論に関する演習を行い,同時に論文作成の指導を行う。II では1年次の演習を踏まえ,音韻論・形態論に関する個別のテーマを取り上げて演習を行い,同時に修士論文作成の指導を行う。
- 言語情報科学特別演習 I, II(大学院総合文化研究科・言語情報科学専攻):音韻論・形態論に関する演習を行い,同時に論文作成の指導を行う。II では1年次の演習を踏まえ,音韻論・形態論に関する個別のテーマを取り上げて演習を行い,同時に博士論文作成の指導を行う。
- 言語科学基礎理論演習 II(大学院総合文化研究科・言語情報科学専攻):この授業では,最適性理論に関する演習を,隔週土曜日開講で行う。今回のテーマは「音韻に関する言語習得・文法獲得」とし,参加者の分担によってこのテーマの学術誌論文・学会発表論文(プロシーディングズ)・博士論文や本のチャプターなどの内容紹介をハンドアウトを用いて行い,全員で建設的/批判的検討を加えていくものとする。その際,題材としては,Tesar, Smolensky らによる Error-Driven Constraint Demotion Algorithm や Boersma, Hayes らによる Gradual Learning Algorithm など習得モデルそのものに関する理論研究でもよいし,各言語の習得過程を記述し説明を与えるような具体的な事例研究・実験研究でもよい。また,論文やディスカッションの量に応じて,正味3時間(休憩込み)の間に,1人が2本紹介したり2回の授業にまたがって紹介してもよい。
評価は出席数や発表や議論への参加度などによって行う。なお,この授業では音韻論や最適性理論に関する予備知識は不可欠であり,言語科学基礎論 II または一般言語理論演習 II など,音韻論に関する科目を履修済みであることが望ましい。
- 言語科学基礎論 II(大学院総合文化研究科・言語情報科学専攻):この授業のねらいは,1)言語学の基本的な方法論や思考法を音韻論を通して理解するとともに,この分野の基本的概念を身につけことと,2)身近な言語現象を自ら観察・記述・分析することで,問題設定から問題解決までの道筋を体験してもらうとともに,批判的検討ができるようにすることである。具体的には,こちらで用意する教材・プリントを用いつつ,1)日本語や英語を中心とした自然言語の音韻体系・音韻現象を観察しながら,そこに含まれる規則性や法則性を見い出せるようになること,2)見い出した規則性や法則性が,音韻論における理論によってどのように説明されるかについての基本的な知識や考え方を身につけること,3)日本語や英語のデータを主体的に観察・検討することにより,分析の問題点や改善法など応用的な諸問題を追及できること,などを目標とする。
授業の進め方は講義形式を採用し,指定教材を叩き台としてトピックごとに内容確認をしながら,配付するハンドアウトにより考察を深めていく。 あらかじめ教材を読んできていることを前提に話を進めるので,授業時には必ず指定範囲を読んでおくこと。なお扱うトピックは,「分節音に関する現象」「音節・モーラに関する現象」「アクセントに関する現象」など,広く深くカバーしたい。評価は出席数・授業中の適切な発言・最終日に行う(一夜漬けの効かない)試験によって行うので,それ相当の積極的な姿勢が望まれる。その他,詳細については初日に行うガイダンスにて連絡する。
なお,この授業は4つの言語学入門講義の1つであり,言語学分野で修士論文を書く場合には必修科目(1年次に履修)となっているが,言語学以外を専門とする学生で音韻論の基礎を身につけておきたいという学生の履修も歓迎する。ただし,一般言語理論演習 IIとの重複履修はできないので,内部進学生は注意すること。
- 一般言語理論演習 II(教養学部・言語情報科学分科):この授業のねらいは,言語学の基本的な方法論や思考法を音韻論を通して理解するとともに,この分野の基本的概念を身につけことと,身近な言語現象を自ら観察・記述・分析することで,問題設定から問題解決までの道筋を体験してもらうとともに,批判的検討ができるようにすることである。具体的には,こちらで用意する教材・プリントを用いつつ,1)日本語や英語を中心とした自然言語の音韻体系・音韻現象を観察しながら,そこに含まれる規則性や法則性を見い出せるようになること,2)見い出した規則性や法則性が,音韻論における理論によってどのように説明されるかについての基本的な知識や考え方を身につけること,3)日本語や英語のデータを主体的に観察・検討することにより,分析の問題点や改善法など応用的な諸問題を追及できること,などを目標とする。
授業の進め方は講義形式を採用し,指定教材を叩き台としてトピックごとに内容確認をしながら,配付するハンドアウトにより考察を深めていく。 あらかじめ教材を読んできていることを前提に話を進めるので,授業時には必ず指定範囲を読んでおくこと。なお扱うトピックは,「分節音に関する現象」「音節・モーラに関する現象」「アクセントに関する現象」など,広く深くカバーしたい。評価は出席数・授業中の適切な発言・最終日に行う(一夜漬けの効かない)試験によって行うので,それ相当の積極的な姿勢が望まれる。その他,詳細については初日に行うガイダンスにて連絡する。
なお,この授業は基本的に修士課程学生のための入門講義(大学院の言語情報科学専攻の「言語科学基礎論 II」との合併科目)である。学部生の履修希望者は,あらかじめ「言語情報分析論」またはそれに相当する入門授業を履修していなければならない。
- 英語 (1)(文法)(教養学部・言語情報科学分科):この授業の目標は,文法理論の1つである最適性理論の考え方を学びつつ,学術論文における論理的な議論の運び方を英語を通して学ぶことにある。そのテーマとして,日本語の有声性とそれに関連する語彙層の問題を巡って展開された論争を扱うことにより,現代音韻理論の方法論(主張を裏付けるための論法や議論の仕方)を吟味・考察する。具体的には,Ito, Mester, & Padgett (1995) の主張と,それに対する Rice (1997) の批判,そして Ito, Mester, & Padgett (2001) の反論と,Rice (2005) の再反論を読み解くことで,テーマそのものの理解はもとより,1)それぞれの主張の論点はどのようなものであるか,2)主張を指示する論拠がどのように妥当なものであるか,3)どちらに軍配が上がるか,などを吟味する。
授業の進め方は分担・発表形式を採用し,参加者にセクションごとのポイントを口述してもらいながら(またはハンドアウトを作成してそれに基づき内容紹介してもらいながら),質疑応答する形で進めていく。評価は出席数と発表とレポートなどによって行う。
- 言語情報科学特別講義 I(リレー講義):言語音の法則性とその計算理論(10月4日)(大学院総合文化研究科・言語情報科学専攻):人間言語の構造や仕組みはランダムに決められているわけではなく,ある種の法則に従っている。それはどの言語の話者であれ当然のように獲得し,それに従って言語を用いているにもかかわらず,自然法則の場合と同様に普段意識されることは全くない。しかし,法則性があるからこそ,母語話者にとってその獲得に大差は見られないのである。ただし,その法則性には全ての言語に共通する部分(普遍性)と,言語ごとに異なる部分(多様性)があり,その異なる部分の決め方が言語の個性を形成している。
本講義では,こうした人間言語で成り立つ法則に基づいてその構造や仕組みを解き明かす文法理論 --- 最適性理論の世界へと誘い,特に音韻や形態に関わる言語現象を観察しながらその法則性について考察しつつ,人間言語の普遍性や多様性がどのように導かれるかについて講義する。特に今回は,言語音の異化現象の類型論に焦点を当てる。
2. 東京言語研究所
- 言語学特殊講義(最適性理論)(理論言語学講座):人間言語の構造や仕組みはランダムに決められているわけではなく,ある種の法則に従っている。それはどの言語の話者であれ当然のように獲得し,それに従って言語を用いているにもかかわらず,自然法則の場合と同様に普段意識されることは全くない。しかし,法則性があるからこそ,母語話者にとってその獲得に大差は見られないのである。ただし,その法則性には全ての言語に共通する部分(普遍性)と,言語ごとに異なる部分(多様性)があり,その異なる部分の決め方が言語の個性を形成している。
本講義では,こうした人間言語で成り立つ法則に基づいてその構造や仕組みを解き明かす文法理論 --- 最適性理論の世界へと誘い,特に音韻や形態に関わる言語現象を観察しながらその法則性について考察しつつ,人間言語の普遍性や多様性がどのように導かれるかについて講義する。前提知識は必要としない。授業の進め方としては,下記テキストを叩き台として,トピックごとに内容確認をしながら批判的検討を加えていく形を採るが,導入や補足やより高度な議論のために,随時ハンドアウトを配付して考察を深めていくつもりである。あらかじめ指定教材を読んできていることを前提に話を進めるので,初回授業時には必ずテキストを用意しておくこと。なお扱うトピックは,「文法の構成」「言語の類型論」「音節構造」「アクセント」「形態論」「文法獲得」「統語論」「理論的諸問題」など,広く深くカバーしたい。
<テキスト>
Rene Kager (1999) Optimality Theory, Cambridge University Press.
<参考書>
原口庄輔 (1994) 『音韻論』 開拓社.
川越えいつえ (1994) 『英語の音声を科学する』 大修館書店.
窪薗晴夫 (1998) 『音声学・音韻論』 くろしお出版.
窪薗晴夫 (1999) 『日本語の音声』 岩波書店.
田中伸一 (2005) 『アクセントとリズム』 研究社.
田中伸一 (2005) 「第6章:韻律音韻論」『音韻理論ハンドブック』 英宝社.
3. 新潟大学(集中)
- 英米言語概論 A(人文学部・地域文化課程英米文化履修コース):[概要] 人間言語で用いられる音の分布や配列は,一見複雑には見えるがランダムになされているわけではなく,ある種の法則に従っている。それは誰しも当然のように受け入れ,それに従って言語を用いているにもかかわらず,自然法則の場合と同様に普段意識されることは全くない。しかし,法則性があるからこそ,母語話者は言語音の分布や配列を難無くこなし,その獲得に大差は見られないのである。本講義ではこうした言語音に成り立つ法則を扱う分野 --- 音韻論の世界へと誘い,日本語や英語などの身近な言語現象を観察しながらいくつかの法則性について考察する。
[達成目標]
○科目のねらい
・言語学の基本的な方法論や思考法を音韻論を通して理解するとともに,この分野の基本的概念を身につける。
・身近な言語現象を自ら観察・記述・分析することで,問題設定から問題解決までの道筋を体験してもらうとともに,批判的検討ができるようにする。
・あわせて,音韻論がいかに身近な学問であるかを実感する。
○学習の到達目標
・日本語や英語を中心とした自然言語の音韻体系・音韻現象を観察しながら,そこに含まれる規則性や法則性を見い出せるようになる。
・見い出した規則性や法則性が,音韻論における理論によってどのように説明されるかについての基本的な知識や考え方を身につける。
・さらに,日本語や英語のデータを主体的に観察・検討することにより,分析の問題点や改善法など応用的な諸問題を追及できる。
田中伸一のホームページへ