担当科目(平成22年度)
1. 東京大学
- 言語情報科学演習 I, II(大学院総合文化研究科・言語情報科学専攻):音韻論・形態論に関する演習を行い,同時に論文作成の指導を行う。II では1年次の演習を踏まえ,音韻論・形態論に関する個別のテーマを取り上げて演習を行い,同時に修士論文作成の指導を行う。
- 言語情報科学特別演習 I, II(大学院総合文化研究科・言語情報科学専攻):音韻論・形態論に関する演習を行い,同時に論文作成の指導を行う。II では1年次の演習を踏まえ,音韻論・形態論に関する個別のテーマを取り上げて演習を行い,同時に博士論文作成の指導を行う。
- 言語科学基礎論 II(大学院総合文化研究科・言語情報科学専攻)(講義題目:音韻論入門):この授業では,人間の発する「音声」の分布や変化の法則を扱う分野(音韻論)の接近法を学ぶことを通して,現代言語学の目標や考え方や方法論などを理解することを主眼とする。題材は日本語や英語に観察される身近な音声現象を扱うが,適宜他言語の現象も紹介するつもりである。
具体的には,1)日本語や英語を中心とした自然言語の音韻体系・音韻現象を観察しながら,そこに含まれる規則性や法則性を見い出せるようになること,2)見い出した規則性や法則性が,音韻論における理論によってどのように説明されるかについての基本的な知識や考え方を身につけること,3)日本語や英語のデータを主体的に観察・検討することにより,分析の問題点や改善法など応用的な諸問題を追及できること,などを目標とする。
授業の進め方は講義形式を採用し,指定教科書を叩き台としてトピックごとに内容確認をしながら,随時ハンドアウトにより考察を深めていく。あらかじめ教科書を読んできていることを前提に話を進めるので,授業時には必ず指定範囲を読んでおくこと。評価は出席数・授業中の適切な発言・最終日に行う(一夜漬けの効かない)試験によって行うので,それ相当の積極的な姿勢が望まれる。
なお,この授業は4つの言語学入門講義の1つであり,言語学分野で修士論文を書く場合には必修科目(1年次に履修)となっているが,言語学以外を専門とする学生で音韻論の基礎を身につけておきたいという学生の履修も歓迎する。ただし,一般言語理論演習 II との重複履修はできないので,内部進学生は注意すること。
教科書:田中伸一 (2009)『日常言語に潜む音法則の世界』開拓社.
- 言語科学基礎論演習 II(大学院総合文化研究科・言語情報科学専攻)(講義題目:音韻論入門):この授業は中・上級者向けの音韻論の演習であり,最適性理論に基づく音韻論・形態論に関する最新論文を,参加者の興味に合わせてハンドアウト形式で発表し合い,互いに議論し合うことで,各自の専門を深めつつ参加者全体の知識を広げることを目標とする。具体的には,1)検討の価値のある良質な論文を見極める目を養うこと,2)最適性理論のねらいや概要についての基本はもとより,多岐に亘る領域の最新の潮流を理解し,参加者の中で共有すること,3)データや分析法を検討することにより,議論の問題点や改善法など応用的な諸問題を追及しつつ,健全な批判精神を養うこと,4)発表の仕方や質疑応答を含む議論の仕方の基本を身に付けること,などを目指す。特に発表者は,論文著者の主張や議論を理解した上で,批判に耐えるだけの十分なアカウンタビリティーをもって臨まねばならない。
授業は原則として発表40分,質疑応答40分,連絡事項など予備時間10分の配分で進めることとする。当然ながら,授業の評価は発表や質疑応答の仕方を見ながら,1)〜4)の達成度により決められる。なお,履修希望者は「一般言語理論演習II」や「言語科学基礎論II」を履修済みであるなど,音韻論・形態論についての前提知識をある程度は持つものとする。
- 一般言語理論演習 II(教養学部・言語情報科学分科)(講義題目:音韻論入門):この授業では,人間の発する「音声」の分布や変化の法則を扱う分野(音韻論)の接近法を学ぶことを通して,現代言語学の目標や考え方や方法論などを理解することを主眼とする。題材は日本語や英語に観察される身近な音声現象を扱うが,適宜他言語の現象も紹介するつもりである。
具体的には,1)日本語や英語を中心とした自然言語の音韻体系・音韻現象を観察しながら,そこに含まれる規則性や法則性を見い出せるようになること,2)見い出した規則性や法則性が,音韻論における理論によってどのように説明されるかについての基本的な知識や考え方を身につけること,3)日本語や英語のデータを主体的に観察・検討することにより,分析の問題点や改善法など応用的な諸問題を追及できること,などを目標とする。
授業の進め方は講義形式を採用し,指定教科書を叩き台としてトピックごとに内容確認をしながら,随時ハンドアウトにより考察を深めていく。あらかじめ教科書を読んできていることを前提に話を進めるので,授業時には必ず指定範囲を読んでおくこと。評価は出席数・授業中の適切な発言・最終日に行う(一夜漬けの効かない)試験によって行うので,それ相当の積極的な姿勢が望まれる。
なお,この授業は基本的に修士課程の学生のための入門講義(大学院の言語情報科学専攻の「言語科学基礎論 II」との合併科目)である。学部生の履修希望者は,あらかじめ「言語情報分析論」またはそれに相当する入門授業を履修していなければならない。
教科書:田中伸一 (2009)『日常言語に潜む音法則の世界』開拓社.
- 言語解析論 I(教養学部・言語情報科学分科)(講義題目:音韻獲得):この授業では,「英語の音韻獲得」をテーマとした演習を行う。授業の進め方としては,Neil Smith (2009) Acquiring Phonology: A Cross-Generational Case Study (Cambridge University Press)を題材として,参加者の分担発表により内容を紹介してもらいつつ,全員で建設的/批判的検討を加えていくものとする。具体的には,参加者にセクションごとのポイントを口述してもらいながら(またはハンドアウトを作成してそれに基づき内容紹介してもらいながら),質疑応答する形で進めていく。評価は出席数や発表や議論への参加度など(場合によってはレポート)によって行う。 なお,履修に当たって予備知識は不要だが,ある程度は言語学について興味や問題意識を持つことが望ましい。
- 英語(文法)(教養学部・言語情報科学分科)(講義題目:言語の脳内文法について考える):この授業では,「言語の脳内文法」をテーマとした演習を行う。例えば英語を外国語として学習・使用する際には,少なくとも初期段階では,英語に関する様々な事実を記述した文法(書)を参照するのが普通である。しかし,母語話者はそうしたものを参照することなく母語を獲得し,誰でも簡単に運用できるようになってしまう。これは,人間には誰でも脳内に文法の青写真を持ち,幼児期にデータを入力すれば内在化された言語(=I-Language)が完成するからだと考えられる。そのことは英語であれ日本語であれ同様であり,この授業ではそうした仮説の中身を検討・検証するのが目標である。
授業の進め方としては,Daniela Isac & Charles Reiss (2008) I-Language (Oxford University Press) のPart I(Chapters 1~4)を題材として,参加者の分担発表により内容を紹介してもらいつつ,全員で建設的/批判的検討を加えていくものとする。具体的には,参加者にセクションごとのポイントを口述してもらいながら(またはハンドアウトを作成してそれに基づき内容紹介してもらいながら),質疑応答する形で進めていく。評価は出席数や発表や議論への参加度など(場合によってはレポート)によって行う。 なお,履修に当たって予備知識は不要だが,ある程度は言語学について興味や問題意識を持つことが望ましい。
- 言語科学1(教養学部・言語情報科学分科)(講義題目:音体系と言語学):この講義では人間の発する「音声」の分布や変化の法則を扱う分野(音韻論)の魅力とおもしろさを,記述と説明の両面から受講者とともに探っていきます。記述とは多様な現象の背後にある規則性の発見であり,その「不思議さ」と発見の喜びには何とも言えない醍醐味があります。説明とは言語理論による規則性の解明であり,なぜ現象が起こるのかの「不思議」を「納得」に変えるという真相解明の醍醐味があります。
記述にはそれ自体に価値があり,必ずしもすぐに説明に至るとは限りませんが,納得できる説明があれば価値が高まります。しかし,言語理論による説明はしっかりとした記述が大前提であり,これがあって初めて価値が出てきます。研究者によって記述と説明のどちらに重点をおくかに違いはありますが,これらは車の両輪みたいなもので,この2つを兼ね備えてこそ言語研究は魅力とおもしろさで人を引き付け,過去から未来に向けて走り続けることでしょう。
そこでこの講義では,日本語の音韻現象の観察・記述を通して,まずは受講者のみなさんに規則性の不思議を体験してもらいたいと思います。その一方で,音韻理論による説明がどのように「なぜ」に答えてくれるのかを探り,不思議を納得に変えるプロセスも体験してもらいます。前提知識は問いません。音韻論の世界にどっぷりと浸かって,その魅力とおもしろさを探究していきましょう。
毎回の授業の進め方としては,下記教科書の指定範囲を読んでくることを前提として,講義形式で話を進めるが,プリントにて補足する場合もある。議論において,質問も大歓迎だが,指名も頻繁に行なう。積極的な参加を期待したい。
評価は,出席や発言など授業参加の積極性30%,小テスト20%,期末試験50%の配分にて決める予定。
教科書:窪薗晴夫(1999)『日本語の音声』(岩波書店).
- 英語演習(教養学部・言語情報科学分科)(講義題目:音法則の不思議):人間言語で用いられる音の分布や配列は,一見複雑には見えるがランダムになされているわけではなく,ある種の法則に従っている。それは誰しも当然のように受け入れ,それに従って言語を用いているにもかかわらず,自然法則の場合と同様に普段意識されることは全くない。しかし,法則性があるからこそ,母語話者は言語音の分布や配列を難無くこなし,その獲得に大差は見られないのである。
この授業ではこうした言語音に成り立つ法則を扱う分野 --- 音韻論の世界へと誘い,日本語や英語などの身近な言語現象を観察しながらいくつかの法則性について考察する。要は,現代言語学の基本的な方法論や思考法を学びつつ,身近な言語現象を観察してみること,そこで起きている現象の「なぜ」を探ることを目標とする。
題材は日本語に観察される身近な音声現象を扱うが,適宜英語や他言語の現象も考察しつつ,人間言語の普遍性や多様性がどのように導かれるかについて講義したい。方法論も特定の理論に左右されない一般的なものを用いるので,前提知識は不要である。
毎回の授業の進め方としては,下記教材を叩き台として,指定範囲を読んでくることを前提に演習形式で話を進める(とてもやさしい英語で書かれている)。それと平行して,別プリントにて頻繁に補足し,議論を深めていきたい。話の流れにおいて,質問も大歓迎だが,指名も頻繁に行なう。積極的な参加を期待したい。
評価は,出席や発言など授業参加の積極性30%,小テスト20%,期末試験50%の配分にて決める予定。
教科書:Tsujimura, Natsuko (1996/2006) "Chapter 3: Phonology," in Introduction to Japanese Linguistics (Blackwell).
- 英語2(教養学部・言語情報科学分科)(講義題目:英語の言語学入門):この授業の目標は,言語の構造や機能の解明を目指す科学としての,言語学の目標・方法論・研究対象を網羅した英文テキストを読むことで,言語学の初歩を理解するとともに,楽しみながら英文読解技術や議論の組み立て方を涵養することにある.内容は,言語学の各領域(統語論,意味論,形態論,音声学・音韻論,語用論)だけでなく,関連領域(歴史言語学,社会言語学,心理言語学)にも亘るものとなっている.英語の諸相を扱うものであるが,随時,日本語とも比較対照させて考察したい.
なお,テキストは平易な英語で書かれており,内容も前提知識は必要としない.いわゆる「英文法」とはひと味違った,現代言語学による英語へのアプローチの面白さを追求していけたらよいのだが.
1回の授業で,ほぼ1章を終える形で進めてゆく.授業内では,学生の担当者による内容紹介,教師による解説・補足,参加者相互の質問・ディスカッションを行なうほかに,内容確認に関する課題や練習問題なども含まれる.
毎回の授業では,ランダムに名指しされた担当者による内容紹介をもとに,参加者からの質問やディスカッションを取り入れて,なるべく教師と参加者との両方向的な交流を通して理解が深められるよう配慮するつもりである.それゆえ,授業に対する積極的な参加が求められる.
上記の授業形式により,評価には最終授業日に行う期末試験(50%)だけでなく,課題や練習問題などの提出や,議論への積極的な参加度(50%)などを加味する.
教科書:First Steps in English Linguistics(影山太郎/ブレント・デ・シェン/日比谷潤子/ドナ・タツキ著,くろしお出版)
2. 東大(本郷)
- 英米文学特殊講義(大学院人文社会系研究科・文学部・英語英米文学研究室):
(講義題目:英語音声学・音韻論):この授業では,人間の発する「音声」の分布や変化の法則を扱う分野(音韻論)の接近法を学ぶことを通して,現代言語学の目標や考え方や方法論などを理解することを主眼とする。題材は日本語や英語に観察される身近な音声現象を扱うが,適宜他言語の現象も紹介するつもりである。
具体的には,1)日本語や英語を中心とした自然言語の音韻体系・音韻現象を観察しながら,そこに含まれる規則性や法則性を見い出せるようになること,2)見い出した規則性や法則性が,音韻論における理論によってどのように説明されるかについての基本的な知識や考え方を身につけること,3)日本語や英語のデータを主体的に観察・検討することにより,分析の問題点や改善法など応用的な諸問題を追及できること,などを目標とする。
授業の進め方は講義形式を採用し,指定教科書を叩き台としてトピックごとに内容確認をしながら,随時ハンドアウトにより考察を深めていく。あらかじめ教科書を読んできていることを前提に話を進めるので,授業時には必ず指定範囲を読んでおくこと。
教科書:田中伸一 (2009)『日常言語に潜む音法則の世界』開拓社.
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