研究の概要

以下は、言語学のことをかなりよく知っている人のための文章です。 言語学というのは一体何なのかを知りたいという方には、スティーブン・ピンカーの 著作、The Language Instinct(邦訳『言語を生み出す本能』)、 Words and Rules(邦訳なし)、 Stuff of Thought(邦訳『思考する言語』)をお薦めします。

自然言語における音と意味との結びつきに関する一般言語学的な理論を構築・検証することが私の研究の中心的な目的です。 意味合成は、複数の統語的構成素(HPSGで言うところのsign) が結合される際に行なわれるのではなくて複数の韻律的構成素 (HPSGで言うところのdomain object)が結合される際に行なわれるのだという、 意味合成に関する新しい理論を提案し、 現在は、その理論の妥当性を検証するために、 日本語における長距離かき混ぜ構文、諸言語における右節点繰上げ構文などの性質を重点的に研究しています。

また、私は、日本語の構造に関する純粋に記述的な研究にも興味があり、 例えば、日本語における否定、量化、焦点の相互作用のあり方などに関して研究を行なっています。

このような研究は、言わば言語自体に関する研究であるわけですが、 言語学の内部で自己完結するものではなく、 言語を人間の脳がどのように処理しているかという問題に関する心理学的研究や、 人間の言語をコンピュータに扱わせることを目指す工学的な研究の一部にとって、 理論的な基盤となるものです。

私の最近の論文の殆どは、researchmapのページや 本サイトの「出版物」のページから ダウンロードできるようになっています。

矢田部 修一
http://gamp.c.u-tokyo.ac.jp/yatabe/index_j.html