言語態 第14号
2015年3月発行
A5判・並製・232頁
定価 700円
本号は、『言語態』初の特集「〈戦後〉の可能性−「戦の後」に留まるために」を掲載しています。
【特集要旨(抜粋)】
…1990 年代、つまり「戦後 50 年」を前後して、日本文学研究という領域でも〈戦後〉という時代を捉え直す動きが始まった。そして今日までの 20 年間、多くの研究者がそうした〈戦後〉に対する 批評を積み重ね、その神話を解体することで、あるべき戦争/戦後責任の形を探求してきた。しかしながら、現在私たちは、〈戦後〉自体を「無かったこと」にしようとする政治状況に向き合っている。〈戦後〉という時代に蓄積され た様々な言説と運動が、そしてそれへの建設的批判の全てが、消去されようとしているのである。〈戦後〉が抹殺されることで、「戦」の前に、忠実に、単純に、戻り始めている。このような 状況に対して、研究者ができることは何か。それは、〈戦後〉を批判しつつ、しかしそこに存在したギリギリの可能性を掴み出すことではな いだろうか。〈戦後〉の可能性―それを再発見 することで「戦の後」に留まる―これが本特集 のテーマである。…
【目次】
論文
●追田好章
鉄路の詩学 萩原朔太郎「告別」と安西冬衛「未成鉄道」における鉄道の認識論的暴力をめぐって
●長沼美香子
大英帝国という近代 大日本帝国の事後的な語り
●井川理
拮抗する法・新聞メディア・探偵小説 浜尾四郎『殺人鬼』における「本格」のゆらぎ
●辛西永
『花花』の方法意識と『婦人之友』
●西田桐子
堀田善衛「曇り日」と文芸誌の「戦後十年」言説 1955年における文学者の責任
特集 〈戦後〉の可能性−「戦の後」に留まるために−
●逆井聡人
原罪に代わるもの 戦後道徳と荒正人
●金ヨンロン
文学テクストと〈歴史的時間〉 太宰治『冬の花火』から『斜陽』へ
●北山敏秀
「戦争体験論」の意味 『われらの時代』を「批判」するということ
論文
●高柳和美
創造性の起源としての女性性をめぐって ノアイユ、プルースト、ウィニコット
●森田俊吾
アンリ・メショニックにおける演劇性の観念 翻訳行為と言語内身体の上演作用の関係について
Yutaka OKUHATA
After the Holocaust The Politics of Memory and Disrorted Communication in Harold Pinter's Plays
書評
●小屋竜平
互盛央著『言語起源論の系譜』
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